原作を読んでいないのでどこがどう違うのかは知らないが、映画で見た限りでは、ハリー・クレッシング著「料理人」に似たグロテスクな執着とブラック・ユーモアが溢れるファンタジーだ。

なんと言っても出だしの出産シーンから「もうどうしましょ」感満載。死体の処理の方法やら何やらに突っ込む暇も無いまま、主人公はただただ自身の欲望に純粋にのめり込み突っ走り、唐突にその生涯を終えてしまう。

何となくヨーロッパの七不思議のひとつ「カスパー・ハウザー」を思い起こさせる人物描写で、あまりに人間的感情の無い様が、変に今日的で怖かったりする。

カスパー・ハウザー ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B6%E3%83%BC

主役は「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」で正にそつくりなキース・リチャードを演じたベン・ウィショー。薄汚れた姿が変に様になる人で、今は亡きパゾリーニ監督が生きてたら、無理やりさらってでも自分の作品に出したんじゃなかろうかと思える程のアブナイ魅力を持った役者だ。


総勢750人のエキストラによる野外でのセックス・シーンがね、余計にパゾリーニを彷彿とさせたんだよねぇ。

ダスティン・ホフマンとアラン・リックマンの芸達者にも支えられ、本当に薄気味悪い、だけど出来の良いブラック・ファンタジーに仕上がってると思います。

好きな匂いにはね、抗えない。

それを永久に保存して置きたいっていう気持ちは、痛い程分かるよ。

主人公と同じ場所で一緒に泣いたさ。いいねぇ、あのシーンは。


マキネ小姐が「絶対に見てっ!」と言ってた理由がわかりました。今頃になっちゃって申し訳ないけど、漸く観ました。多謝です。

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