ISBN:4901784676 単行本 清宮 真理 バジリコ 2005/05/11 ¥1,680
***業務連絡***
abc小姐 収
長い間お借りしててすんまそん。ようやっと読み終えましたので、近日中にお返しに上がりますだ。

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で。

読み終えて今、アメリカも日本もなんら変わらんなぁと、なんだか気持ちが少し落ちた様な上がったような、変な心持ちがしているわしだ。

英語教師が天職と言う、この生まれも育ちも北アメリカの60も半ば過ぎになる知的な白人女性が、自分の人生(特にSEXに関する事柄)これでいいのか?という疑問に答えを出す手段の一つとして、新聞にセフレ募集の広告を出した時の始末記なのだが、何処までが真実でどこからがフィクションなのかは、本人のみぞ知るだ。

40年以上に渡る教師生活の中で沢山の論文やエッセイを出している卓越した英文の表現力を持つ作者のこれが処女作なんだそうで、日本訳文もとても解りやすく楽しく、軽快でいながら、実の内容はとても重たい。

美しく知的で感じのいい英文の表現を学ぶいい機会かも知れないので、若い学生達はこの原文を自力で訳しても良いかもな。

英語の表現と老人のSEXに関する問題が、一緒に学べるいい機会かも。

それにこのテンポの良い文章を読んでいると、なんだかディスカバリー・チャンネルでやっている「SEXって何?」とかいう番組を見ている様な気分になってくるから余計に面白い。

あの手の番組のナレーションは、視覚に問題の有る人達にも内容がすぐ理解出来る様に、物凄く判りやすく言ってくれるのだ。

映像がすぐ頭に浮かんで来る様に、文章の並びがとても工夫されているんだと思う。

この作者が、いかに長年に渡って英語力の無い人達の指導に尽くしてきたかが判るというものだ。

さて。

この本は、ある種「告白本」であるのだが、また別の意味では「警告本」であるかも知れない。

告白とは、文字通り60代の女性にだって立派に性欲は有るのよっという、とても勇気のある告白だし、警告とはつまり、あんたたちが単に「お母さんやお婆さん」と呼んで何時も変わらずそこに居て、家族の犠牲になるのが当たり前で、面倒を見るのも当たり前だと思っている人達の心の内にも、あんたたちと同じような熱い気持ちが溢れてるのよ。だから「なめたらいかんぜよ」という、夫や子供に対する警告だ。

まぁ、読んでみんしゃい。

それでどう感じるかは、読み手次第だし。

全体的には良くまとまっていて、これはこれで良いんではと思うけど、わしとしてはもう少し彼女が自分の内に入った事柄に触れても良かったのではとも思うと、少し残念な気持ちがする。

だけど多分そこにはすでに行き着いてはいても、文章として表現するにはまだ生々しくて、もう少し時間が掛かるんだろう。

もう少し時間が来たら、多分この事件を基にした「小説」を書くんじゃないかな。M・デュラスの「ラ・マン」と「北の愛人」の関係みたいに。

この本は、男が読んでももしかしたらあまりピンとも来ない内容かも知れない。どうしてこの60代の老嬢がセフレを求めたのかは、頭では理解しても、身体では理解不能かも知れないと思う。

・・・。反対か? 身体では理解しても、頭では判らない・・・か。

彼女が求めたのは自分に絶対の信頼を置いてくれる、自分だけを見つめて守ってくれる「父性」であって、別にあちこちの不特定多数の男と、ただただSEXしたかったのでは無い事は、彼女の奥底の心はすでに気付いている。それはもうすでに文章として表現されている。

だけど、実際の父親との関係の見つめなおしやそれを乗り越えるのは、只今続行中らしく、この本の中ではまだ語られない。

子供の時代、当たり前の子供でいられなかった人達の苦悩を、子供としての時間を思い切り享受して育った人達は、心底理解出来るんだろうか。

「幼い頃に子供らしくないと言われた私は、今になって子供っぽいと言われる。それをあなたに我慢してくれと言うのは無理なお願いでしょうか」

自分を捨てて逃げていく恋人に宛てたこのマーガレット・フラーの言葉を引用し、自分自身の姿に重ねる作者の心の叫びが、彼女の一見奔放に見える行動の答えを明確に示している。

幼い頃に年下の兄弟の面倒を見る為むりやり老成しなければならなかった子や、精神や身体に障害のある者の面倒を見なければならなかった子供達の苦悩が、そうでない人達に判るだろうか。

自分の面倒も看られない内に、問題の有る親の人生の負担が掛かってきた子供の苦悩が、判るだろうか。

母親という人生最大の宿敵に、身長も精神も打ち勝つ事が出来なかった女の苦悩が、判るだろうか。

とにかく読んでみんしゃい。お勧めです。

下世話に老人の性に関する部分を読むもよし、その下の下に淀んでいる成長出来無い少女の嘆きにまで触れるもよし、自分が作り上げた高いプライドと知性の垣根を越えようと必死にあがいている白人女性の苦悩を読むもよしだ。

この本の原題は「A ROUND-HEELED WOMAN」と言うんだが、ラウンド-ヒーリドって何だ?と思って調べてみたら、丸々と太っているとか、ピストルを持った女とか。

何だか判るような判らないような言葉だ。

で、家の辞書を総動員して調べたら、1960年に出版された「アメリカン・スラング辞典」に「(皮肉を込めて)素敵な戦闘員は語る」というのがあった。

なんかSEXの垣根を越えた勇気有る女性を表現するスラングらしい。

勇気っつーか、まぁ、簡単に寝ちゃうオバカさんを揶揄しての言葉みたいだが・・・

性交するのは簡単だって、軽く信じちゃった女は語る。って感じかな。

う・・・む。この人の文章を一冊訳したら、少しはまともな英文が書けるようになるかしらん・・・・。

頑張れ、現役高校生諸君っ。

って、自分を励ませよ、わし。

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