恋 / 少年の覗いた秘め事
2005年7月26日 映画
映画については ↓
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=7282
原作については ↓
http://www.alc.co.jp/eng/hontsu/book/0312/01.html
70年代のカンヌ受賞作品で音楽はミッシェル・ルグランと来ると、45歳以上の人達には「ああ、あんな感じ」かなと大体の想像は付くものだけど、期待を裏切る事無く「あんな感じ」の名作です。
とは言っても、やはりある程度の年齢にならないとこの物語が一体何を言いたかったのか理解すら出来ないと思うので、その当時観てつまらなかったと思った人は、是非観直してみるといい。
地方公開されたのかどうか記憶が定かで無いのだが、この映画が作られた1971年の7月に私は13歳になってた。奇しくもこの映画の中で物語の進行役をになった少年と同じ歳だ。
で、映画の中での彼の誕生日が7月27日。近いぢゃん。
もしも公開時に観ていたら、もっと面白い発見があったかもだ。この頃はすでに一人で映画を観に行ってたし、当時はアラン・ベイツの大ファンだったしね。90年代に入ってから出た「ミスター・フロイト」でのあまりに爺むさくなった姿にゲンナリしたんだけど、今回これ観てまた惚れ直したりして。(^^ゞ
若いっていいなぁ。
だから彼の作品は大体全部観ているはずなんだけど、これだけはどうも覚えがない。
もしかしたらテレビで放送した時見たけど子供心に退屈で忘れた可能性も有る。そんな内容だもの。
それをこの7月に観るというオカシなご縁。
で、感動したりする訳だ。何だか判らないうちに3回も続けて観てしまった。何故だ ?
よく判らないんだけど、なんか中毒になって毎日観続けてしまいそうで、怖くなってDVDに残さず消してしまった。
どうやら自分の心の奥深くの何かに連動しちゃったみたいだよ。
映画って、その時の心が映し出されるから、映画の感想もそのつどクルクル変わってしまったりして。だから人間なんだろうけどねぇ。
もうすぐ13歳になる少年の眉間に、くっきり刻み込まれた苦悩の縦皺や、気取っていながらも、小作人や貧乏な少年にバカ丁寧に優しいお金持ちの人達の生活。
自分に正直に生きようとしながらも身分の違いに翻弄される恋人達の姿と、それを見守る人達の心の痛み。
物語はあくまでも静かに静かに、何事も無かったかのごとく進行していく。
だから返って事の重さが響いて来るよ。
恋に目覚め始めた少年が、結婚を控えた心優しい年長の友人に尋ねるシーンが印象的だ。
「2人の男が決闘をするんだ。一人はある女性の夫で、もう一人は彼女の恋人。夫が撃たれて死ぬんだけど、これって女性の方が悪いんじゃないの ?」
少年の必死の形相を見ながらも、諭すように穏やかな口調で友人はこう答える。「いや、女性はけっして悪くないんだよ」と。
友人は少年がその女性の騎士としての役割を喜んでやっている事を知っている。彼の言う所の「夫と恋人」が誰と誰なのかも知っている。
だからこそ、あえてそう答えるのは何故か。
夫亡き後女手一つで自分を育ててくれている母の姿を見て育った少年の前に、残酷な女の性を見せつける憧れの女性。
どんなに彼女を愛していても、まだ子供で弟の同級生としか見てくれない現実に絶望すら感じる少年の姿。
私はこの映画を、どこか少年の立場で観ていた自分に気がついた。
でも現実はそうじゃない。このずる賢い女のはずだ。
だけど、彼女は本当にただのずる賢いだけの女なんだろか。
色々な事情が有って、どうする事も出来なかっただけの話じゃないだろか。
みんながその事を知っていて、みんなが黙っていた。
ただそれだけの事だ。
若く真っ直ぐな感性は、そこまでの柔軟性も無くポキリと折れてしまった。
夫となる人はその事を知った上で、そっくりそのまま彼女を受け入れたのに、少年の心はあの13歳の誕生日以来ずっと雨降りのままだ。笑う事すら困難な、硬い表情のまま歳を重ねてしまった。
燃え盛る炎の様に彼女を愛した男は、その激しさで自身を焼き尽くしてしまった。彼もまた少年の心のまま大人になってしまった男だから。
このアラン・ベイツの最後のシーンは、状況的には不自然だけど、絵画的にはとても美しい。とても悲しい。
タタンッタタンッと窓に吹き付ける雨音の様な悲しいピアノの旋律が、ずっと耳に残る。
彼女は、結局地位と名誉に目が眩んだだけなんだという思いと、そうではなくて、どうしたらいいのか判らなかっただけなんだという混乱が残る。
その混乱は、私の心の中の姿でもあるわけで・・・
じゃあ、あの時どうしたらよかったんだろうという思いが、この映画を何度も観てしまうという行為になって出ているんだろうか。
答えなんか、どこにも無いのに。
・・・蛇足だが、この時分のジュリー・クリスティと今の平井堅はチョット似てるかも。別の意味でびっくりしたよ。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=7282
原作については ↓
http://www.alc.co.jp/eng/hontsu/book/0312/01.html
70年代のカンヌ受賞作品で音楽はミッシェル・ルグランと来ると、45歳以上の人達には「ああ、あんな感じ」かなと大体の想像は付くものだけど、期待を裏切る事無く「あんな感じ」の名作です。
とは言っても、やはりある程度の年齢にならないとこの物語が一体何を言いたかったのか理解すら出来ないと思うので、その当時観てつまらなかったと思った人は、是非観直してみるといい。
地方公開されたのかどうか記憶が定かで無いのだが、この映画が作られた1971年の7月に私は13歳になってた。奇しくもこの映画の中で物語の進行役をになった少年と同じ歳だ。
で、映画の中での彼の誕生日が7月27日。近いぢゃん。
もしも公開時に観ていたら、もっと面白い発見があったかもだ。この頃はすでに一人で映画を観に行ってたし、当時はアラン・ベイツの大ファンだったしね。90年代に入ってから出た「ミスター・フロイト」でのあまりに爺むさくなった姿にゲンナリしたんだけど、今回これ観てまた惚れ直したりして。(^^ゞ
若いっていいなぁ。
だから彼の作品は大体全部観ているはずなんだけど、これだけはどうも覚えがない。
もしかしたらテレビで放送した時見たけど子供心に退屈で忘れた可能性も有る。そんな内容だもの。
それをこの7月に観るというオカシなご縁。
で、感動したりする訳だ。何だか判らないうちに3回も続けて観てしまった。何故だ ?
よく判らないんだけど、なんか中毒になって毎日観続けてしまいそうで、怖くなってDVDに残さず消してしまった。
どうやら自分の心の奥深くの何かに連動しちゃったみたいだよ。
映画って、その時の心が映し出されるから、映画の感想もそのつどクルクル変わってしまったりして。だから人間なんだろうけどねぇ。
もうすぐ13歳になる少年の眉間に、くっきり刻み込まれた苦悩の縦皺や、気取っていながらも、小作人や貧乏な少年にバカ丁寧に優しいお金持ちの人達の生活。
自分に正直に生きようとしながらも身分の違いに翻弄される恋人達の姿と、それを見守る人達の心の痛み。
物語はあくまでも静かに静かに、何事も無かったかのごとく進行していく。
だから返って事の重さが響いて来るよ。
恋に目覚め始めた少年が、結婚を控えた心優しい年長の友人に尋ねるシーンが印象的だ。
「2人の男が決闘をするんだ。一人はある女性の夫で、もう一人は彼女の恋人。夫が撃たれて死ぬんだけど、これって女性の方が悪いんじゃないの ?」
少年の必死の形相を見ながらも、諭すように穏やかな口調で友人はこう答える。「いや、女性はけっして悪くないんだよ」と。
友人は少年がその女性の騎士としての役割を喜んでやっている事を知っている。彼の言う所の「夫と恋人」が誰と誰なのかも知っている。
だからこそ、あえてそう答えるのは何故か。
夫亡き後女手一つで自分を育ててくれている母の姿を見て育った少年の前に、残酷な女の性を見せつける憧れの女性。
どんなに彼女を愛していても、まだ子供で弟の同級生としか見てくれない現実に絶望すら感じる少年の姿。
私はこの映画を、どこか少年の立場で観ていた自分に気がついた。
でも現実はそうじゃない。このずる賢い女のはずだ。
だけど、彼女は本当にただのずる賢いだけの女なんだろか。
色々な事情が有って、どうする事も出来なかっただけの話じゃないだろか。
みんながその事を知っていて、みんなが黙っていた。
ただそれだけの事だ。
若く真っ直ぐな感性は、そこまでの柔軟性も無くポキリと折れてしまった。
夫となる人はその事を知った上で、そっくりそのまま彼女を受け入れたのに、少年の心はあの13歳の誕生日以来ずっと雨降りのままだ。笑う事すら困難な、硬い表情のまま歳を重ねてしまった。
燃え盛る炎の様に彼女を愛した男は、その激しさで自身を焼き尽くしてしまった。彼もまた少年の心のまま大人になってしまった男だから。
このアラン・ベイツの最後のシーンは、状況的には不自然だけど、絵画的にはとても美しい。とても悲しい。
タタンッタタンッと窓に吹き付ける雨音の様な悲しいピアノの旋律が、ずっと耳に残る。
彼女は、結局地位と名誉に目が眩んだだけなんだという思いと、そうではなくて、どうしたらいいのか判らなかっただけなんだという混乱が残る。
その混乱は、私の心の中の姿でもあるわけで・・・
じゃあ、あの時どうしたらよかったんだろうという思いが、この映画を何度も観てしまうという行為になって出ているんだろうか。
答えなんか、どこにも無いのに。
・・・蛇足だが、この時分のジュリー・クリスティと今の平井堅はチョット似てるかも。別の意味でびっくりしたよ。
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