誰も知らない

2005年7月5日 映画
1988年にこの事件が起こったとき、何だか訳がわからなくて気持ち悪くなった覚えがある。

この事件を起こした母親は知的障害者だったのかとか、こうなるまでどうして周りの人達が気付いてやれなかったのかとかの疑問もあった。

だけどこの後すぐに、隣に精神障害を持つシングル・マザーがまだ小学低学年の男の子と越して来て、何となく理解出来た。

こちらがどんなに普通に接しても、信じられない対応を返して来る人に初めて会って、近所は一時騒然としていたものだ。

その母親は、他人にバカにされるのを恐れて物凄い大柄な態度で周囲の人に接していた。

それに精神障害を持つ人はコミニュケーションの取り方に似たような一定の障害を持っているので、すぐに周りから人が引き始めてしまい、地域の中で孤立してしまったのだ。

自分を良く見せようと嘘をつきまくり、気にいらない人への嫌がらせが段々とエスカレートして行った。

近所の人達の苦情で民生委員や警察が出てくるに及んで、ついに子供を学校に通わせなくなり、暫くの間は親子で家の中にこもって暮していた。

狂ってる母親は好きで籠もってるんだからいいとしても、子供はせめて学校にと、随分地域が動いていたっけ。

私達も大家さんと一緒に民生委員と話し合いをしたりして、何だか大変な時期があったりした。

結果その子はフリー・スクールに通えるようになり、友達も出来て、ある年齢になったらサッサと家を出てしまった。

そう、この事件の子供達と似たような環境の子が、隣に住んでたんだっけ。

嘘をつく人は、何となく判る。どんなに自分の事を偉そうに言ってみても、中身が伴わなければその薄っぺらな雰囲気は周囲に伝わってしまうものだ。

この事件を起こした母親が精神障害を持っていたのか、知的障害者だったのかは知らない。劣悪な環境で育ち、人間としての尊厳も機能を持たない人達に育てられたどうかも知らない。

今も健在なら、幾つになってるんだ ?

この子供達が、自分の人生を元気で生きていてくれればいいと思う。

長男はゴジラ松井と同じ年かぁ・・・

映画の方も半ドキュメンタリーの手法を取っていて、何処までが演技でどこまでが実際のリアクションなのか、その境が判らない。

靴を出してみんなで公園に行くシーンでは、カメラの横に次男役の子供を立たせて変なポーズをさせ、知らずに顔を上げた長男役の柳楽君が思わず笑ったのを使った等、日本映画チャンネルで見た時オマケで付いていた監督インタビューの中で、面白いエピソードを披露してくれた監督。

子供の成長を撮る為一年掛けて撮影し、その間に柳楽君が声変わりをしたのが一番の収穫だったとか。

長女役の女の子は初潮を迎えたのかなとも思ったけれど、実際の事件では妹達はみな幼児だったので、その点は触れられ仕舞い。

仕方ないか。

インタビューにとつとつと答える監督を見ていたら、中東などで戦争の中でも笑顔を失わない子供達の写真を撮り続ける長倉洋海氏を思い出した。

似てるなぁ・・・。

とに角、一度観る事をお勧めします。変に暗くもお涙頂戴でもなく、とつとつとした子供達の日常が描かれていて、かえって事の深刻さを浮き彫りにしているから。

この事件について詳しく書いてくれている方のサイトがありました。FAMILYの所を読んでみて下さい。↓

http://www8.ocn.ne.jp/~moonston/index.htm

子役の4人がみんないいよね。長女役の子は将来田中裕子っぽい力の抜けた女優になるかもな。

YOUもよくこんな役を引き受けたなぁとも思うけど、彼女以外の女優がやったら、物凄く嫌な映画になっていたかもと思うと、彼女でよかったのかなとも思う。

「軽くお手軽に生きて行きたい」と思えば思う程、人生って重く苦しくなって行くのかも知れないね。

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