DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2004/06/23 ¥2,625
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ジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画には、いつも何となく古臭い印象が付きまとう。
本人自体、ヨーロッパのあんまり垢抜けしてない兄ちゃんって感じもするし。
かつてはベルギー王立バレエ団のメンバーで、ペルサーチのモデルした事もあるっていうのに・・・
だけど、だからこそ、この人には最近のひ弱な男にはない「男気」を感じるのかも知れないなぁ。
最近の映画で「ヘル」という、ロシアの刑務所に収監されたアメリカ人の男の話があるんだけど、それも「えっ、これ最近の作品なんですか?」と疑いたくなる程、妙に怪しいレシロさ漂う一本だ。
そのままスティーブ・マックイーンなんかが出てきそうな雰囲気がある。
内容はこんな感じ ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000223MQA/zattakomu-22/249-7203698-0805910
外国の刑務所に収監された話しなら、彼の場合地のままのベルギー人がアメリカの刑務所に入れられた話で良いんではとも思うのだが、誰の考えなのか、なぜか舞台はロシア。
数ある男囚物と同じく、様々な虐めや理不尽な仕打ちがこれでもかっと主人公に襲いかかり、気持ちの悪いシーンもあるので生理的に受け付けられない人もいるかと思うのだが、実はこれは結構硬派のヒューマン・ドラマでもあるんだわ。
ヴァン・ダムの作品には、幾つか「習作と改訂版」的なカップリングになっている作品がある。
「ブラッド・スポーツ」と「クエスト」。「ダブル・インパクト」と「マキシマム・リスク」。そして「ブルージーン・コップ」とこの「ヘル」だ。
もしかしたら脚本下書きの時点では同じ物だったのを、削ったり膨らませたりして変えたのかもね、と勘ぐりたくなる程似ている。
ファンとしてはそれなりに楽しめるのでどうでもいいんだけど、「ブルージーン・コップ」だけは、どう贔屓目に見ても駄作だった。それが改訂版(?)の「ヘル」では格段と良くなってて、きちんとした人間ドラマになっていたので、一安心。
クロード・ルルーシュの「マイ・ラブ」に対する「愛と悲しみのボレロ」じゃないけど、一応作ってみて、気にいらない所があったので、お金を貯めてまたリベンジしてみましたっていうのかなぁ、世の中には、こんな風な作品って沢山有るの?
それとも、これはフランス語圏の人の、一般的な思想形態なの?
ようワカランが、とに角「ヘル」の中には「岩窟王」やら「パピヨン」の中にある「絶望の淵に立った時、初めて見えてくる己との対話」というテーマがあって、そういう所をぐぐぐっと真面目に突き詰めるのには、アメリカや香港よりはロシアという土地の方が良く似合っていたのかも知れないな、とかね、思う訳だ。
ムサッ苦しいおっさんばかりが出てくる映画で、見ている内に頭の中では何故か「ビクトル・ユーゴ」の文字ばかりが浮かんでは消える。
なんだろね。
で、不覚にも泣いたりするんだわ。異形の大男とのエピソードで。
ヴァン・ダムには演技力が無いとか、ただの筋肉の塊とかのヤッカミ・ヒガミの中傷が常に付きまとうんだけど、まぁこれもいたし方ないかもね。
アメリカでは「フランス語を話すマッチョなイロ男」として、世のダンナ衆から嫌われてるらしいし、日本でも「アクションらしいアクションもしないB級スター」の扱いで、なんか散々なんだけど、基本的にこの人、文学青年だよ。
子供の頃は太っていて虚弱で、分厚い眼鏡をかけた本の虫の子供だったし。
心配したお父さんが、彼にバレエとカラテを進めて、もともと運動神経は良かったので、メキメキと上達したらしい。
最近はやらないけど、彼を有名にした「ヘリコプター・キック」という連続の回転キックはもともとはクラシック・バレエの技法だ。同じベルギー人のスター・ダンサー、パトリック・デュポンにも匹敵する力強く綺麗な足技だが、アクション畑の人には単なる回転キックでしかないらしい。
残念だねぇ・・・。
そんなヴァン・ダムは、実はとっても繊細な感性を見せる人で、「ヘル」の中で逆境に負けて自分を見失って行く時、蝶に姿を変えた亡き妻の魂が見守ってくれていると思い正気を取り戻すという設定が泣かせる。
絶望にうちのめされて自暴自棄になってしまった自分でも、かつては愛してくれた人がいる。その人の為にも、自分を見失ってはいけない。もし見失ってしまったら、その人に申し訳ない。
いいテーマだ。とってもヨーロッパ的だ。騎士道精神に溢れている。
それに、なんか高倉健さんの映画みたいだ。武士道にも通ずるきっぱりした礼節を感じる。
監督のリンゴ・ラムもジャン=クロードも、ブルース・リーや任侠映画好きだとか。
「これが男の生きる道だぜっ」と、自分の主張を突き通す態度は立派だよ。
そして、女性に対しては、完全に無防備で純粋。俺は君にくびったけなんだ、君の愛が無いと生きていけないと、なんのテライもなく言ってのけるのは、やはりフランス語圏の人間ゆえか?
アクション云々ではなく、そんな硬派な所が、この人の真の魅力なんだろね。
実生活では結婚離婚を繰り返してて、愛の流離い人でもあるらしいが・・・
写真は私の好きなヴァン・ダム映画のひとつ「ボディ・ターゲット」。日本題がとても変だ、原題が内容そのままなので、どうか日本でつけた題に惑わされないように注意です。現代版「シェーン」とでもいうか、アメリカ版「遥かなる山の呼び声」とでも言いたくなる内容で地味で渋い男の映画です。
居場所を探して流離う男が、やがて愛する人とめぐり合って、そこに自分の魂の置き場所を作っていく。
この人は、結局は好きなのね。こういう話が。
筋肉付けすぎて誤解をウケチョルがの、本当は繊細で傷つきやすい奴なんぜよ。
殆どの映画、確かにつまらんけど、どうか許しとぅせ。
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ジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画には、いつも何となく古臭い印象が付きまとう。
本人自体、ヨーロッパのあんまり垢抜けしてない兄ちゃんって感じもするし。
かつてはベルギー王立バレエ団のメンバーで、ペルサーチのモデルした事もあるっていうのに・・・
だけど、だからこそ、この人には最近のひ弱な男にはない「男気」を感じるのかも知れないなぁ。
最近の映画で「ヘル」という、ロシアの刑務所に収監されたアメリカ人の男の話があるんだけど、それも「えっ、これ最近の作品なんですか?」と疑いたくなる程、妙に怪しいレシロさ漂う一本だ。
そのままスティーブ・マックイーンなんかが出てきそうな雰囲気がある。
内容はこんな感じ ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000223MQA/zattakomu-22/249-7203698-0805910
外国の刑務所に収監された話しなら、彼の場合地のままのベルギー人がアメリカの刑務所に入れられた話で良いんではとも思うのだが、誰の考えなのか、なぜか舞台はロシア。
数ある男囚物と同じく、様々な虐めや理不尽な仕打ちがこれでもかっと主人公に襲いかかり、気持ちの悪いシーンもあるので生理的に受け付けられない人もいるかと思うのだが、実はこれは結構硬派のヒューマン・ドラマでもあるんだわ。
ヴァン・ダムの作品には、幾つか「習作と改訂版」的なカップリングになっている作品がある。
「ブラッド・スポーツ」と「クエスト」。「ダブル・インパクト」と「マキシマム・リスク」。そして「ブルージーン・コップ」とこの「ヘル」だ。
もしかしたら脚本下書きの時点では同じ物だったのを、削ったり膨らませたりして変えたのかもね、と勘ぐりたくなる程似ている。
ファンとしてはそれなりに楽しめるのでどうでもいいんだけど、「ブルージーン・コップ」だけは、どう贔屓目に見ても駄作だった。それが改訂版(?)の「ヘル」では格段と良くなってて、きちんとした人間ドラマになっていたので、一安心。
クロード・ルルーシュの「マイ・ラブ」に対する「愛と悲しみのボレロ」じゃないけど、一応作ってみて、気にいらない所があったので、お金を貯めてまたリベンジしてみましたっていうのかなぁ、世の中には、こんな風な作品って沢山有るの?
それとも、これはフランス語圏の人の、一般的な思想形態なの?
ようワカランが、とに角「ヘル」の中には「岩窟王」やら「パピヨン」の中にある「絶望の淵に立った時、初めて見えてくる己との対話」というテーマがあって、そういう所をぐぐぐっと真面目に突き詰めるのには、アメリカや香港よりはロシアという土地の方が良く似合っていたのかも知れないな、とかね、思う訳だ。
ムサッ苦しいおっさんばかりが出てくる映画で、見ている内に頭の中では何故か「ビクトル・ユーゴ」の文字ばかりが浮かんでは消える。
なんだろね。
で、不覚にも泣いたりするんだわ。異形の大男とのエピソードで。
ヴァン・ダムには演技力が無いとか、ただの筋肉の塊とかのヤッカミ・ヒガミの中傷が常に付きまとうんだけど、まぁこれもいたし方ないかもね。
アメリカでは「フランス語を話すマッチョなイロ男」として、世のダンナ衆から嫌われてるらしいし、日本でも「アクションらしいアクションもしないB級スター」の扱いで、なんか散々なんだけど、基本的にこの人、文学青年だよ。
子供の頃は太っていて虚弱で、分厚い眼鏡をかけた本の虫の子供だったし。
心配したお父さんが、彼にバレエとカラテを進めて、もともと運動神経は良かったので、メキメキと上達したらしい。
最近はやらないけど、彼を有名にした「ヘリコプター・キック」という連続の回転キックはもともとはクラシック・バレエの技法だ。同じベルギー人のスター・ダンサー、パトリック・デュポンにも匹敵する力強く綺麗な足技だが、アクション畑の人には単なる回転キックでしかないらしい。
残念だねぇ・・・。
そんなヴァン・ダムは、実はとっても繊細な感性を見せる人で、「ヘル」の中で逆境に負けて自分を見失って行く時、蝶に姿を変えた亡き妻の魂が見守ってくれていると思い正気を取り戻すという設定が泣かせる。
絶望にうちのめされて自暴自棄になってしまった自分でも、かつては愛してくれた人がいる。その人の為にも、自分を見失ってはいけない。もし見失ってしまったら、その人に申し訳ない。
いいテーマだ。とってもヨーロッパ的だ。騎士道精神に溢れている。
それに、なんか高倉健さんの映画みたいだ。武士道にも通ずるきっぱりした礼節を感じる。
監督のリンゴ・ラムもジャン=クロードも、ブルース・リーや任侠映画好きだとか。
「これが男の生きる道だぜっ」と、自分の主張を突き通す態度は立派だよ。
そして、女性に対しては、完全に無防備で純粋。俺は君にくびったけなんだ、君の愛が無いと生きていけないと、なんのテライもなく言ってのけるのは、やはりフランス語圏の人間ゆえか?
アクション云々ではなく、そんな硬派な所が、この人の真の魅力なんだろね。
実生活では結婚離婚を繰り返してて、愛の流離い人でもあるらしいが・・・
写真は私の好きなヴァン・ダム映画のひとつ「ボディ・ターゲット」。日本題がとても変だ、原題が内容そのままなので、どうか日本でつけた題に惑わされないように注意です。現代版「シェーン」とでもいうか、アメリカ版「遥かなる山の呼び声」とでも言いたくなる内容で地味で渋い男の映画です。
居場所を探して流離う男が、やがて愛する人とめぐり合って、そこに自分の魂の置き場所を作っていく。
この人は、結局は好きなのね。こういう話が。
筋肉付けすぎて誤解をウケチョルがの、本当は繊細で傷つきやすい奴なんぜよ。
殆どの映画、確かにつまらんけど、どうか許しとぅせ。
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