ヴァイブレータ

2005年2月15日 映画
DVD ハピネット・ピクチャーズ 2004/06/25 ¥4,935
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中学の頃、夏休みの何日か、家の近くの国道で早朝ヒッチハイクの真似事をして遊んだ事がある。

とはいっても親指を立てて本当に止めた訳ではない。ただ道瑞に立って、走ってきた運ちゃんと目が会うと「ニコッ」と笑っただけだ。

朝靄の中、まだ殆ど車の通りもない時間に走ってくるのは大抵長距離トラックだった。

夜明けの運ちゃん達は大体少しハイな感じで、ニコニコと感じの良い笑顔で車を止めて助手席のドアを開けると「乗ってかない〜」とか声を掛けて来る。

みんな一晩中走って疲れて、ちょっとしたイベントを求めてたんだろう。

「このトラック何処までいくの?」

「何処行きたいの? 連れてってやるよ」

こんな会話を少し交わしてバイバイ。

中には本気で「お前幾つだっ、親に心配掛けるなっ、家まで乗っけてってやる」と怒る親切なオヤジがいたりして。

あの運ちゃん達の中に、この映画のように「ブルブルッ」と私の心の琴線を震わす人が一人でも居たら、今頃はどうなってたのかなぁと思う。

この映画は殆どが彼と彼女の2人芝居。でもそれがとても自然で、ある種のドキュメンタリーを見ているような錯覚さえ覚える。

心に深い闇を抱えた者同志の道行きは、見ている人それぞれの旅でもあるんだろう。

「ああああああああああああああ」

彼女のこの言葉とも音ともつかない、心のひび割れ、振るえが、いいなぁ。

覚えが有る。自分にもこうなった時が有る。どうしたらいいのか判らなくなって、ただひたすら何かを吐き出したくなった事。

ラストの2人の表情は、見ている人それぞれが自分なりの答えを出せばいい。

そんな感じにたっぷりと空間を取った、余裕を持たせた演出が憎い。

もしこれが70年代のアメリカン・ニューシネマ時代に作られた作品だったら、この男女の関係はもう少し乾いた物になっていただろうか。

でも時代は「今」で、舞台は日本だ。

2人の関係は少し微妙で、少し湿っている。

この後この2人はどうなっちゃうんだろう。本当に彼女の言うように「ただ、それだけ」で終わっちゃうんだろうか。

微妙な寺島しのぶの表情が、なんだかとても可愛く見える。


この微妙な曖昧な終わり方に、少しばかり、この2人の未来への希望を感じたりして。

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