8Mile

2004年11月4日 映画
DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2004/09/29 ¥2,090
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上映時、街でこのポスターを見かけた時、何故か物凄く心に残ったのを思い出す。

この写真から何が判るというのでも無いくせに、思わず足を止めて暫く見入ってしまったのだ。

その頃、エミネムの顔すら知らなかったわし。

個人的にも好みな顔立ちなので、もし知ってしたら先ず顔でファンになったかも知れない。

でも、先ず音ありきだ。

彼は他のラッパーとは明らかに違う「音」を出している。

ラップ自体は好きではないのでCDを買って聞く事はないのだが、ラジオから流れたラップ曲の中で、思わず手を止めて聞き入ったのがこの映画の主題歌だった。

大抵のラップは、歌詞の意味が判らないし曲が単調なので、かかっているとだんだんイライラしてくるものが多い。で、その曲が終わるまでラジオを切ってしまったりする事もある。

英語をその場で同時理解するのはわしには無理。余程簡単な単語の羅列ならいざ知らず、こんな苦難に満ちた言葉を俗語マンサイで言われたら、それこそそれが英語なのかも判らなくなりそう
だ。

それに曲に抑揚があればまだしも、殆どは狭い音域の間で、それこそ「呼吸」をするかのように歌うから、一緒に乗ってないとつまらないの一言。

でも字幕を通じて見ると、優れたラップの言葉には本当に魂の叫びがこもって居るのが理解出来る。ちゃんと韻を踏んでいて、言葉に意味が有るし。

それが共感され支持される所以なんだろうね。

ただの愚痴、罵声毒舌の垂れ流しでは、その場を面白く出来ても、やがては飽きられる。

言葉の持つ意味、繋がり、その影響力を知って居ないと、こんな風にはならないだろう。

貧しい暮らしをしていても、世に出る人は黙っていても光るんだよね。

エミネムって、どんな「血」を引いているんだろう。

ちょっと観るとウド・キァとかジュード・ロウの様なヨーロッパ色の濃い顔立ちだし、本人激怒だろうけどナチの親衛隊の制服とか物凄く似合いそうだ。

でも、反面ホロコーストの収容者ともいえそう。

過激な印象も強い人だけど、繊細な美しさと感性を映像の世界でも生かしてほしいなぁ。普通のハリウッド大作じゃあ、まずこの魅力は生かせない気もするけどね。

アンディ・ウォーホルやビィスコンティがお元気だったら、きっと引く手あまたに使った事だろうねぇ・・・


錦鯉の模様じゃないけど、時々びっくりする位の美形が出てくるのよね、この世には。

それが大抵は、なんか掃き溜めの中に居たりする訳だ。

でもね、どんな掃き溜めに居ようが、ぼ〜っとただ歩いていようが、世に出て光る人は、もう最初から光ってるんだって。

この映画の中でも、好きになった女の子が「あなた成功するわ。予感がするの」と彼に言うシーンがある。

半自伝的要素の強い作品だというが、もしかしたら、彼の周りに本当にそう言ってくれた人がいたのかも知れないよね。


わしも昔むかし、たまたま観光で訪れた香港の海岸で撮影隊がロケしてて、休息時間にただぼ〜っと歩いていた男の子を見て、友達と「あの子、大物になるよね」と2人して予言した役者がいる。

たまたま友達が私の写真を撮ってくれた時、何か考え事してたんだろう、無礼にもシャッター降ろす瞬間に私と友達の間を横切っていって、図らずも「虎の拳」の形をしたわしとツーショットしちまったお間抜けな奴。

だけど、彼が通り過ぎた後、2人して思わず見惚れてその背中を追ってしまったのだ。

写真にも、私達の撮影を立ち止まって待っていてくれた白人のオバサンが、ニッコリ笑いながら彼を目で追っているのがハッキリ写っている。

当の本人はほとんど放心した表情で煙草をふかし、片手にポーチをもってうつむき加減に、ただただ歩いているんだがの。


それは、1982年3月のレパルス・ベイ。まだ映画に出る前の、テレビドラマに出始めた頃の、19歳のトニー・レオンだ。

のちのち世に出る人は、もうそんな下っ端の頃から光っているわけよ。

・・・、その光が目に見えるとかではないんだけどね。あれは不思議な現象だよねぇ。

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