十面埋伏

2004年9月29日 映画
「十面埋伏」は中国の古い楽曲の題なんだそうだ。

10の顔を隠すとでもいう意味だろか。丁度今作っている映画の脚本にピッタリだという事でつけられたとか。

調べたら戦いに由来する曲だという。周囲にびっしりと敵に囲まれた状態を表すとか。

今日は水曜日のレディス・ディで映画が1000円なので、朝一の空いている回で金城武主演「LOVERS」を観て来た。この十面伏埋は中国語の題なのだが、英語の題にしても日本語の題にしても、どうにもイマイチな感じがしてしまう。

基本的に中途半端な感じなのだ。

元々予定していたキャストのアニタ・ムイの急死で脚本を無理やり書き換えたという過程があった為らしいのだが、映画会社の予算や役者のスケジュールの関係から撮影の変更が難しかったのかもしれない。

機会があったら、是非アニタがやるはずだった役を足して作り直して欲しいと思う。

まぁ、これはこれでいいけどね。

とは言っても、この話はとても内面的な話で普通の武侠アクションやスケールの大きな歴史絵巻を期待して行ったのでは多分ガッカリしてしまうだろう。

これは歴史物に姿を借りた、人を愛する事で傷つく男の姿を描いた恋愛私小説だ。

・・・監督の自伝だろうか・・・。

何となく物語の裏の裏に、あのデカパイのコン・リーの姿を感じるのは、勘ぐり過ぎ?

この物語には恋人を三年待ち続ける中年男の愛と、たったの三日で激しい恋に落ちる若い男の姿が描かれている。

はっきり言って、その対象になる女の心情は結構雑だったりする。

でもだからこそ、古い時代に生きる男達の、真摯に人を愛する姿が痛々しく伝わって来る訳だ。

チャンバラらしく、剣を振り回してチャンチャンバラバラと派手にやり合ってはいるけれど、結局の所傷ついてポロポロと刃こぼれしているのは己の心。

背中に短剣が刺さったままの姿で歩いて居るのも、剣に形を変えた愛の傷跡だ。無理に抜けば血が噴出して致命傷になってしまう。だから男は抜こうとしても、思い留まる。

しかし、女はそれを承知で歯を食いしばって抜こうとする。

新しい人生の為に。

でも、双方共最後の引導を相手に渡す事は出来ない。一度でも強く愛し合った相手に対して、人はそんなに非情には成れないものだと、監督は観客に訴えているようだ。

コン・リーだって私にまさかここまで酷い仕打ちをと。

でもヒロインに、無理やり胸の短剣抜かして大出血させてるし・・

いやいや、脱線。

しかし、金城武はこういう話がよく似合うなぁ。

個人的に、この五年間の金城武物は全て自分のツボにハマりまくりなので、今回のこの「LOVERS」も及第点をつけてしまおう。

恋人はこうでなくっちゃねぇ。風の様に生きていても、時には留まる場所が必要だもの。

風にも生まれる場所が有り、休む場所が有り、そして周りの空気と同化してフワリと消える場所が有るのだから。

ただただ吹き抜けて行くだけの風では、いつか力尽きて倒れてしまうよ。

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