夢のとりこ

2004年6月18日 エッセイ
十代の頃から、繰り返して見続けた夢があった。

木造三階建ての大きな家の、一番上にある部屋に行くのだ。

磨きこまれた黒光りする階段をトントントンとリズミカルに駆け上る足の下の、ひんやりした木の感触まで良く覚えている。

「来た来た来たよ〜」と大声で叫びながら。

一番奥の部屋に入ると、身体の大きなスキンヘッドの若い男が紫の女物の着物をひっかけて立てひざで花札をしている。

その向かいには、くたびれた着流しの浪人風の若い男が寝転んでいる。

客ではない。家族か仲間か、それに類する者達だ。

駆け上って来たのは私だろうか。

私は下働きの女 ?

この部屋の女郎 ?

まるで判らない。

判るのは、この後起こる出来事。

窓から屋根に出て、通りを行く「踊り教」の人達の見物をしようとして、足を踏み外してしまうのだ。

落ちるのは、私と浪人風の若い男。

師父に良く似た男。

落ちながら最後に目に入った光景は、血の気の引いた顔で私に手を差し伸べようとしているスキンヘッドの男の顔。

それがヒロに似てたなんて、今更言った所で何にも成らないけど。

言ってもよかったのかなぁと、チョコッと後悔。

ヒロに出合ってから、パッタリと見なくなった夢の話。

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