夕方、そろそろ店じまいしようかなぁ、なんて思っている所に、フラリと入ってきた一人の背の高い青年。

「友達に聞いて来たんですけど、ここに民族楽器置いてありますよね」

そういって、棚に陳列してある楽器を手に取って試している姿がとても幼く見えたので、思わず学生さん? と聞くと、いゃ、自分は社会人です、と。

自分は社会人です。働いています。学生に見えますか?

今でも、妙にその言葉だけは覚えている。

クールなのか単にぼ〜っとしているのか、ポーカー・フェイスの下で何を考えているのやら掴めないその本心。

もしかしたらムッとしたのかも知れないな。あんた俺の事バカにしてる訳って感じに。

それから始まって、私達は色々な話しをした。いくらお客様とはいえ、本来人見知りの激しい私なのだが、不思議と何の警戒心も与えない人だった。

彼の方も、話している内に最初のポーカー・フェイスはあっと言う間にどこかに消えて、多分これが本来の姿なのだろうと思われる、にこやかで柔和な笑顔に変わった。

もっと話して居たいなぁという気にさせる、不思議な存在感。

今度は、自分が持ってる楽器ここで披露しちゃいますから。

と勝手に約束して、笑いながら帰っていった。

それがそもそもの始まりだった。

今から6年前の、今日だったっけ。

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