ひとごろし

2004年4月9日 映画
DVD ジェネオン エンタテインメント 2001/10/25 ¥4,935

山本周五郎の魅力に、情けないけど40にして気づいた私。折を見て機会のあるごとに、その原作の映画化を見ているこの頃だ。けっして原作を読もうとは思わない。何故か。

実は、まだ時代小説の文章が良く読みこなせるまでに回復していない事に、気づいてしまったのだ。


京都に住んで長いアメリカ人の友人が、疲れている時に英語版の小説を読んでいたら、字面を追っているだけで意味を理解していない事に気づいて愕然としたと、以前訴えていたが正にそれ。


時々日本語が解らなくなる時があって、正直ビビる。


30を越えた頃から頻発したごく軽い脳梗塞の影響で、このまま脳細胞が血行障害によって壊疽してしまうか、新しいシナプスが伸びて回復するのかは、自分で自分の身体の力をいかに抜くかできまる。どれだけ緊張を緩められるか。


薬を飲んで治るのなら、何故世の中にこんなに沢山の、脳障害を起こしたがために飲んだ薬の副作用に、苦しんでいる人達がいるんだろう。


まぁ、いいや。



要するに、頑固一徹っていうのも、時に自分で自分の人生を縛ってしまうから、もう少し頭も身体も心も柔らかくしていましょうよ。と、この作品の中で山本周五郎は言いたいのだなと、感じたわけだ。


松田優作演じる所の弱虫サムライと、剣の腕一つで成り上がってきた丹波哲郎演じる豪傑武士の戦いやいかに。

人にとって大切なものはなんですか。

一番大切なものは、名誉ですか。

プライドですか。

地位ですか。

お金ですか。

山本周五郎が描くサムライ達は、そのままエコノミック・アニマルと呼ばれた戦後のサラリーマンの姿そのものだった。

だから、特におじさん達に絶大な人気があったのだけれども、今みると、その役職云々の他にも、もっともっと深い「人として」のものが描かれている。

だから、長く人々に愛され続けているんだよね。

「どら平太」やらも面白いが、私はむしろ「ちいさこべ」や「雨あがる」の方に、そのメッセージ性を強く感じて気にいっている。

人が人として、その人となりを全て認めてもらえて、信頼され、愛される事の安心感。


自分の良い所、悪い所の全てを受け入れ納得して折り合いをつけて生きている人の、生きる力の強さ。


これは「開き直り」とは全くの別物。開き直るとは、ある種物事を投げ捨てて、見なくしてしまっているのだから。


この世の中に、ナニが正解というのは、もしかしたら無いのかも知れない。

でも、人として生まれてきたからには、人として生きる上での約束事はあるだろう。

獣には獣の、昆虫には昆虫の、約束事があるように。

そう思う私だから、山本周五郎の作品に触れると、なんとなくほっとするわけだ。

ああ、よかった、と。

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