ディビッド・ボウイの「屈折する星屑の上昇と下降そして火星から来た蜘蛛の群れ」というアルバムの「五年間」という曲の題が妙に気になっていた所に、今度は久しぶりに見た大好きな映画「恋する惑星」の中で金城武が言った「五年間付き合ってた彼女と別れちゃって」というセリフが重なって、「五年間」という言葉が頭から離れないでいた。
五年間。
短いようで、長い時間だ。
五年前に生まれた子供なら幼稚園にも行くし、木ならけっこうな太さに育つ時間の長さだ。
そんな五年前の今日、Hと師父とあと数人が、彼のアパートの近くの公園で花見をしたのだった。
曜日も同じ月曜日。Hがわざわざ師父の休みに合わせて調整してくれたのだ。
「俺が日本を離れる前に、ちょっと早いけど花見しようよ」
そう、五年前の今日はとても寒かった。風も強くて殆どがまだ硬い蕾のまま。でも私達はそんな寒々した空の下でも楽しくお酒を飲んで騒いでいたのだ。
まだ子宮内膜症の痛みの酷い頃で、寒いからパスするという私に、俺の寝袋に包まってれば大丈夫だよと言って、二つある内の「外用」を貸し出してくれたっけ。
この五年間が短いのか長いのか、今の私には良く判らない。
あの時一緒にお花見をした人達は、今何処で何をしているんだろう。鬼畜F氏は私に会うとコソコソ逃げ回っているし。
・・・、まぁ、あの騒ぎの後Hと何があったのか一目瞭然という感じもするが。
今日あの時の公園に、師父と2人で桜を見に行った。中は改装工事中で入れなかったが、外回りを車でぐるりと一周しながらとても懐かしい気持ちで一杯になってしまった。
満開の桜、まだ五分咲きの桜。あの時と同じに、全く蕾のままの桜。
色々な桜の木が、色々な表情で風に吹かれていた。
この場所が気に入ってるから、暫くはここに住むつもり。だから旅に出ている間も家賃だけは入れておくんだ。
そう言ってはいたけど、もうさすがに今はどこかに引越しただろう。「俺って飽きっぽいからさ」が口癖だったっけ。
そのお花見の五日後、Hはバックパック一つでアメリカ大陸に渡っていった。
出かける日の朝、わざわざ電話でウチの住所を確認して来た。随分前に教えて、知ってるはずなのに。
忙しいだろうから早めに切り上げようと思っていたら、むこうから「もう時間ないから、切るね」と変に投げやりな口調で言われてしまった。
私は努めて落ち着いた声で「いってらっしゃい。ちゃんと帰ってきてね」と当時流行っていたJRのCMの真似をして言ったのだが、それに答えた声は驚くほど真面目で、一言「はい、いってまいります」
なんだか、特攻隊を送り出す気分になるような声だったっけ。
何を置いても、礼儀正しい人だった。
人の道に外れる事が、したいと思っても出来ない人だった。
私達の関係は、他人が聞いたら吹きだしそうな程、時代遅れなものだったんだろうと思う。
でも、だからこそ、心が痛い。
お互いを見つめる視線の強さが、今でも心に突き刺さっている。
今どこかで、幸せならいい。
誰か心を寄せ合う人が、傍にいればいい。
でも、会いたい。
ひと目でも、元気な姿が見たい。
そんな切ない思いでいる夜に、またタイミング良く自宅の電話にワン切りがあるんだなっ、これが。
一体だれなのよ〜(ToT)
五年間。
短いようで、長い時間だ。
五年前に生まれた子供なら幼稚園にも行くし、木ならけっこうな太さに育つ時間の長さだ。
そんな五年前の今日、Hと師父とあと数人が、彼のアパートの近くの公園で花見をしたのだった。
曜日も同じ月曜日。Hがわざわざ師父の休みに合わせて調整してくれたのだ。
「俺が日本を離れる前に、ちょっと早いけど花見しようよ」
そう、五年前の今日はとても寒かった。風も強くて殆どがまだ硬い蕾のまま。でも私達はそんな寒々した空の下でも楽しくお酒を飲んで騒いでいたのだ。
まだ子宮内膜症の痛みの酷い頃で、寒いからパスするという私に、俺の寝袋に包まってれば大丈夫だよと言って、二つある内の「外用」を貸し出してくれたっけ。
この五年間が短いのか長いのか、今の私には良く判らない。
あの時一緒にお花見をした人達は、今何処で何をしているんだろう。鬼畜F氏は私に会うとコソコソ逃げ回っているし。
・・・、まぁ、あの騒ぎの後Hと何があったのか一目瞭然という感じもするが。
今日あの時の公園に、師父と2人で桜を見に行った。中は改装工事中で入れなかったが、外回りを車でぐるりと一周しながらとても懐かしい気持ちで一杯になってしまった。
満開の桜、まだ五分咲きの桜。あの時と同じに、全く蕾のままの桜。
色々な桜の木が、色々な表情で風に吹かれていた。
この場所が気に入ってるから、暫くはここに住むつもり。だから旅に出ている間も家賃だけは入れておくんだ。
そう言ってはいたけど、もうさすがに今はどこかに引越しただろう。「俺って飽きっぽいからさ」が口癖だったっけ。
そのお花見の五日後、Hはバックパック一つでアメリカ大陸に渡っていった。
出かける日の朝、わざわざ電話でウチの住所を確認して来た。随分前に教えて、知ってるはずなのに。
忙しいだろうから早めに切り上げようと思っていたら、むこうから「もう時間ないから、切るね」と変に投げやりな口調で言われてしまった。
私は努めて落ち着いた声で「いってらっしゃい。ちゃんと帰ってきてね」と当時流行っていたJRのCMの真似をして言ったのだが、それに答えた声は驚くほど真面目で、一言「はい、いってまいります」
なんだか、特攻隊を送り出す気分になるような声だったっけ。
何を置いても、礼儀正しい人だった。
人の道に外れる事が、したいと思っても出来ない人だった。
私達の関係は、他人が聞いたら吹きだしそうな程、時代遅れなものだったんだろうと思う。
でも、だからこそ、心が痛い。
お互いを見つめる視線の強さが、今でも心に突き刺さっている。
今どこかで、幸せならいい。
誰か心を寄せ合う人が、傍にいればいい。
でも、会いたい。
ひと目でも、元気な姿が見たい。
そんな切ない思いでいる夜に、またタイミング良く自宅の電話にワン切りがあるんだなっ、これが。
一体だれなのよ〜(ToT)
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