タンバリン

さっきまでタンバリンの手入れをしていた。

小学四年生の誕生日に父が買ってくれたものだ(・・・CHRISTMASだったかな・・)。ロクに使いもせずただ持ち続けていたのだが、いつの間にか鐘と留め金の所が錆びてしまい、汚らしくなっていて「もう駄目かも」と思っていた代物。

数日前から何故か気になっていて、今日意を決して磨いてみた。そしたら・・・

ビカビカだ〜　!!!

「新品同様」とはお世辞にもいえないが、皮の黒ずみや持ち手部分の木の手垢のつき具合が、30数年を経た風格すら醸し出しているではないか。

「・・あなたはもしや、名のあるタンバリン様でちたか?」

思わず問いかけてみる。叩けば「煩い」と怒られてばかりの暴れ者も、今はシンと静まり返って答えない。(ああ、なんてリリック)

ふと、これが新品だった頃の匂いが蘇って来た。子供心に「臭い」と感じた匂いなのだが、今ならあれが上質のピッグ・スキンを張った和太鼓の匂いと同じだと判る。

そう、これって「太鼓」だったのね。

それに結構高い物だったのかも知れないとも思う。あれだけ埃塗れで汚れまくっていたのに、鐘や留め金・木枠のタンバリンを形成しているどの部分もびくともしていないのだ。

これが欲しかった頃、世はまさにGSブームの真っ只中。従姉妹の持っていた金枠だけのタンバリンが欲しくて仕方なかった。当時「タンバリン」といえばその型ばかり。当然それを買ってもらえるとばかり思っていた私は、父が買って来てくれた皮張りのこれに「はぁ・・?」って感じで感謝意識欠落してたよなぁ。
40路を過ぎて後、私の人生が「太鼓」とともに歩むと、当時の父が考える訳もないのだが、今はなんともありがたい。

これからの音楽療法で使わせてもらうよ。上質の楽器を、真価もわからない子供に買い与えてくれてありがとう。やっばり良い物は長持ちします。その点からいえば決して高くないよね。

この言葉を15年前に言えてれば、もっと安らかに旅立てたかな。ごめんね、オヤジ。

人も物も、本当の価値なんて、ず〜っと後になってから判るものなのかも知れないね。