我が敬愛するピアノの師匠マダム・SMがお茶を飲みながら言った。

「あなた、サッチョン・フクチョンって知ってる?」

「何ですか、それは」

「昭和30年代から40年代によく言われてた言葉でね、チョンガーって韓国語で独身って意味じゃない。で、福岡と札幌があの頃特に単身赴任が多くてね、サッポロ・チョンガー、フクオカ・チョンガーを縮めてそう言ってたのよ」

「ああ、歓楽街も大きいのがありますもんね。じゃあ大阪や東京も、そんな風に言うんでしょうか?」

「さぁ、あんまり聞かなかったわねぇ。何だかあの頃はサッチョンとフクチョンの人達の家庭が特に問題が多くて、それでよく聞いたのかも知れないわね。女性問題やら、奥さんの浮気やらで」

「ウチの父も日本中を単身赴任してましたけど、結局北海道で浮気がばれて大騒ぎになりましたからね。我が家もサッチョン家庭だったんですねっ」

「あらあら、それは大変だったわねぇ。うちもねぇ、7年もイランにいたから、何してたんだか判んないわ。知らぬが仏かもねぇ」

何だか知らないが、私の周りには単身赴任家庭や、転勤族や、単親または擬似単親の家庭の人達が圧倒的に多い。

家族が離れて暮していたり、生まれ故郷を離れて住処を点々としたりして、そのつど得る物も失う物も沢山あるんだけれど、精神的な風通しは、みな押しなべて良い感じがする。

生まれた土地にずっと住んで、家族がみっちりと一緒に暮して、異なる風習との接点もなく過ごしてしまった人達は、これからの世の中に対して、少しハンデを感じる事が多くなるかも知れないなと思う。

何となく、そんな気がする。

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